部屋と胆嚢と私。

半年前、母が手術した。何も重たい病気とかではなく、だからこれから話すのも笑い話。母は胆嚢にコレステロールの塊が石のように溜まっていたらしく、これが腹痛の原因になっていた。”胆嚢は胆汁を貯めるだけの袋”と小学校の理科でも習った通りで、やはりその機能はさして重要ではなく、ただ切除すれば解決とのことだった。

 

手術当日、家族代表として立ち会った僕は手術が始まると、4畳ほどの誰もいない部屋に通された。3時間ほど待つと執刀医がポーチ大の箱を持って静かに入ってきた。

 

医師「手術は無事成功です。」

僕「ありがとうございます」

医師「それでこれが…」

僕「…」

医師「お母さんの胆嚢です」

僕「…!」

 

知ってましたか?最近(?)は手術後に切除した臓器を親族に見せるらしい。そのシステムを知らなかった僕は、期せずして見た母の胆嚢にどうコメントしていいか分からず。親の臓器にかける適切なコメント、ご存知の方いたら後学のために教えて頂きたい。

 

この時、この空間はなんだろう?

部屋と胆嚢と私。と医師。

1人で勝手に可笑しくなってしまった。シュールという言葉を安易に使いたくはないが、これはそれだった。

 

さてこの状況のヤバさをどう説明したら良いか分かったので、このたび記事にしようと思い立った。言わずもがな僕も母親のお腹から生まれてきた訳だ。

 

つまり、こういう事↓

 

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 ある日、街中を歩いていると前から見覚えのある顔。

 

僕「あれ?あなたもしかして…」

??「…」

僕「20年前マンションでお隣だった…」

 

近づいてみると、やはり。歳を重ねてもなお残る面影。

 

??「……」

僕「…胆嚢さんですよね!!?」

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…こういうヤバさがあそこにあった。

 

僕「…お元気ですか?」

??「あのマンションね。部屋にゴミ溜め込み過ぎて、クレームでたから強制退去よ」

 

彼はそう言って去っていった。